全国53施設を展開するコミュニティ創出スタートアップが次なる成長段階へ
宮崎県発のスタートアップ企業である株式会社ATOMicaが、シリーズBラウンドの1stクローズを完了したことを発表した。今回の調達では、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)を主たる出資者とし、グローバル・ブレインが運営する「高輪地球益ファンド」がリード投資家として参画。既存投資家のFFGベンチャービジネスパートナーズも引き続き出資を行った。
JR東日本との戦略的パートナーシップが加速
今回の資金調達で注目すべきは、JR東日本との深い協業関係だ。ATOMicaは、JR東日本がTAKANAWA GATEWAY CITYに2025年5月に開設した共創拠点「TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hub(LiSH)」の企画・運営を担当している。高輪地球益ファンドは、このLiSHを起点として環境・モビリティ・ヘルスケア分野のスタートアップ支援を目的に設立されたファンドであり、今回の出資により両社の協業関係がより一層深化することが期待される。
ATOMicaとJR東日本は、日本全国のスタートアップをLiSHに呼び込み、そこで成長を加速させたスタートアップを再び全国に結ぶという「広域スタートアップエコシステム」の構築を目指している。
創業から4回連続の継続投資を実現
特筆すべきは、FFGベンチャービジネスパートナーズによる創業から4回連続の継続投資だ。2019年末のシードラウンドでリード投資家として参画して以来、同社はATOMicaが実施したすべてのラウンドに出資を継続。同一投資先への初回ラウンドから4回連続アップラウンドでの投資実行は、FFGベンチャービジネスパートナーズにとって初の事例となる。
急成長するソーシャルコワーキング事業
ATOMicaは「頼り頼られる関係性を増やす。」をミッションに掲げ、全国各地でコワーキングスペースの企画・運営を通じたコミュニティ創出事業を展開している。
現在の事業規模(2025年6月時点)
- コミュニティマネージャー在籍数:232名(正社員、業務委託、アルバイト合計)
- 運営施設数:全国29都道府県・53施設
- 自社SaaS「knotPLACE」導入施設数:120施設超
- プラットフォーム事業規模:前年度比約3倍に拡大
事業領域も従来の地域共創施設やスタートアップ施設に加え、大学内共創空間や企業内のオープンイノベーション施設へと拡大している。また、全国の人・企業・地域を結ぶキャリアプログラム「Coyage」や、カスタマーサクセス特化型BPO事業「KOMMONS」など、プラットフォーム事業も順調に成長を続けている。
AIを活用した新たな価値創出への取り組み
今回の資金調達を機に、ATOMicaは事業の根幹である「コミュニティマネージャー」にAI技術を掛け合わせた新たな価値創出に取り組む予定だ。LiSHを起点として、この新しい取り組みを全国へ展開していく計画を明らかにしている。
経営体制の強化
2025年5月30日付で、グローバル・ブレインの木塚健太氏が社外取締役に就任。同氏の豊富な知見と経験を活かし、成長加速とガバナンス強化の両立を図る体制を構築していく。
今後の展望
調達総額や具体的な資金使途については、今夏に予定されているファイナルクローズと合わせて発表される予定だ。ATOMicaは九州発のスタートアップとして、日本全国に「頼り頼られる関係性」を増やす仕組みの構築を一層加速させていく構えを見せている。
コワーキングスペースという物理的な場を超えて、持続的な共創とコミュニティ形成を実現するATOMicaの取り組みは、地方創生やオープンイノベーションの新たなモデルケースとして、今後の動向が注目される。